借金をする際に保証人を立ててほしいと言われることがありますが、保証人には「保証人」と「連帯保証人」があります。
似た言葉ですので、混同している人も多いですが、保証人と連帯保証人には責任や権利にどのような違いがあるのでしょうか。
保証人と連帯保証人の違いや、保証人に認められている権利などをまとめて見ていきたいと思います。
保証人と連帯保証人の違い
連帯保証人は債務者本人と同等の扱い
保証人と連帯保証人では、保証の範囲や権利が異なり、連帯保証人は債務者本人と同じ扱いとなりますが、保証人には一定の権利が認められており、連帯保証人の方がより大きな責任が生じます。
基本的に連帯保証人は債務者本人と同等の扱いとなり、債務者と同じ責任を負っています。
債権者は連帯保証人にいつでも債務者本人と同じように、借金の取り立てを行うことができます。
一方で保証人には、債務者本人や連帯保証人とは異なる3つの権利が与えられています。
保証人に認められる3つの権利
- 催告の抗弁権
- 検索の抗弁権
- 分別の利益
保証人に認められている3つの権利とは、「催告の抗弁権」、「検索の抗弁権」、「分別の利益」の3つです。
聞き慣れない言葉ではありますが、意味としてはそれほど難しくないので順に見ていきましょう。
催告の抗弁権
まず催告の抗弁権とは、先に債務者本人に請求を求めることができる権利です。
保証人はあくまで債務者の保証人であり、まず債務者本人が借金の返済をするもので、債務者が返済できなかった時にはじめて保証人に返済義務が生じます。
連帯保証人の場合は、債務者でなくいきなり連帯保証人に返済を求められても、拒否することができず返済をしないといけません。
検索の抗弁権
次に検索の抗弁権とは、債務者が返済できるのに返済を拒否している場合などに、債権者に対して債務者の財産を強制執行して差し押さえるように求めることができます。
債権者から見ると、債務者が取り立てに応じない場合、財産があるなら強制執行をして債務者本人から返済をしてもらうことになります。
連帯保証人はいつでも債務者と同じように取り立てをすることができるので、検索の抗弁権もなく返済しなくてはいけません。
むしろ、返済を拒否していると、債権者から強制執行されて財産の差押えを受けることもあります。
分別の利益
3つ目の分別の利益は、保証人が複数いる場合は保証人の人数で割った金額のみを返済すれば良いという権利です。
仮に300万円の借金に対して3人の保証人を立てていた場合に、保証人は1人100万円までを返済すれば後の金額については他の保証人が返済しなかったとしても返済する必要はありません。
一方で連帯保証人には分別の利益はありませんので、保証人が複数いるケースでも、債権者に取り立てをされれば1人で全額を返済しなければいけません。
このように保証人には、まず債務者本人に請求を求める「催告の抗弁権」、債務者が財産があるのに返済しない時に債権者に強制執行を求めることができる「検索の抗弁権」、保証人が複数いる場合は人数で割った金額のみを返済すればよい「分別の利益」があります。
逆に連帯保証人には、上記すべての権利はなく債務者本人と同じ責任を負うことになります。
連帯保証人の責任がいかに重いかがわかりますね。
連帯保証人と連帯債務者の違い
なお、連帯保証人に似た言葉として「連帯債務者」があります。
住宅ローンなどで連帯保証人ではなく、連帯債務者となる場合がありますが、これは保証人ではなく「一緒に借金を返済する人」です。
夫の収入だけではローンを組むのに足りない場合などに、妻も連帯債務者としてローンを組むケースがあります。
保証人ではなく連名で借金をするようなものですので、連帯保証人との違いは理解しておきたいですね。
物的担保と人的担保
保証人とは債権者が担保権を設定するものの1つで、債務者が借金を返済できなくなったときに、債務者に代わって借金を返済する保証のことです。
保証人のように人が保証をするものを「人的担保」といい、家や土地を担保に入れて借金の保証とすることを「物的担保」といいます。
人的担保は対人担保ともいいます。
どのような担保権を設定するかは金融機関や契約によっても異なりますが、保証人は人が返済することを担保するものといえます。
連帯保証人の求償権
このように連帯保証人には債務者と同じ大きな責任を追うことになりますが、債権者から取り立てを受けて人の借金を代わりに返済して、それ以上何もできないというわけではありません。
連帯保証人には、借金を債務者に代わって返済したら、本来返済すべきだった債務者へその返済額を支払ってくれるよう求めることができます。
これを求償権といいます。
また、連帯保証人が複数いるような場合は、債務者が返済できない場合、他の連帯保証人に対して求償することもできます。
ただし、他の連帯保証人に求償する場合は、借金の額を連帯保証人の人数で割った金額が1人の連帯保証人が負担すべき金額となり、その金額を求償することになります。
仮に3,000万円の借金を連帯保証人AとBの2人で共同保証していた場合、債務者が返済できずに以下の返済割合で連帯保証人が返済したとします。
借金総額:3,000万円
連帯保証人A:2,500万円
連帯保証人B:500万円
この場合、連帯保証人1人が返済する必要があるのは1,500万円ずつとなりますので、債務者が返済不能な場合、連帯保証人AからBへ1,000万円の求償をすることができます。
3,000万円÷2=1,500万円←1人の連帯保証人が返済する必要があるお金
1,500万円-500万=1,000万円←AからBへ求償できる金額
連帯保証人が複数いる場合には、返済する金額は人数割りすることで計算することになると覚えておくと良いでしょう。
もちろん債務者本人に求償する場合には、全額(上の例ではAが2,500万円、Bが500万円で合計3,000万円)を債務者本人に求償することができます。
連帯保証人や保証人になって大丈夫?
連帯保証人の責任は非常に重いため、連帯保証人、保証人になるのはどちらも気軽になるものではありません。
人に頼まれて連帯保証人になって大きな借金を背負ってしまう人もいますし、それが原因で人生が大きく狂うことになります。
自己破産や個人再生を行う人の原因で生活苦についで多いのが「保証債務・肩代わり」、つまり保証人になったことで破産してしまうケースです。
破産全体の3割近くを占めていますので、いかに多くの人が保証人や連帯保証人になって失敗しているかがわかります。
身内や友人から「迷惑をかけないから」と言われて、断りきれず連帯保証人になってしまう人もいますが、上述した通り連帯保証人は債務者と同じ責任を負うことになります。
借金の額を確認して、自分がその金額の借金を背負うことになっても問題ないか、という視点で連帯保証人になるのか検討する必要があります。
保証人であっても、債務者が返済できなくなったら自分で返済しないといけなくなってしまいますので、連帯保証人、保証人どちらのケースでも慎重に検討する必要があります。
連帯保証人を頼む人もよくわからずに銀行などの債権者に連帯保証人を立てるよう言われて頼んでいる人も多いので、連帯保証人にどんな責任が生じるか頼んだ人に聞いてみるのも良いでしょう。
連帯保証人になる際に注意すること
どうしても連帯保証人になると決めた際には、最低限以下の項目については注意するようにしましょう。
- 債務者の経済状況、返済能力
- 連帯保証の契約種類や契約内容
- 委任状や承諾書は出さない
まずは債務者の経済状況や返済能力です。
一般的に債務者の経済状況が良好であれば連帯保証人は不要となるケースも多いです。
連帯保証人が必要となるのは、債務者の返済能力に債権者が疑問を感じているからであって、そのような状況でお金を借りても結局返せなくなって、債務者の目的は果たせず自分もダメージを受けて終わります。
そのようなことがないためにも、債務者の返済能力はきちんとあるのか、どのような計画で返済していくつもりなのかきちんと確認しておく必要があります。
返済能力の確認なんて聞きづらいという人もいるかもしれませんが、連帯保証人の責任は重いものですので、それだけのことを確認する権利はあります。
また連帯保証の契約書類や契約内容を必ず確認するようにしましょう。
よくあるのが、根保証契約で今回借りるのは100万円だけど、上限1,000万円まで連帯保証する契約内容になっていたりすることもあります。
契約書をすべて読まないと後で大きなトラブルとなりますので、契約内容についてはよくよく確認する必要があります。
また、委任状や承諾書などの書類は出さないようにすることも注意する必要があります。
連帯保証人を立てる際に「公正証書作成嘱託委任状」や「根抵当権設定仮登記承諾書」など委任状や承諾書を求められることもあります。
これらの書類を提出していると、返済が滞った際に裁判所を通さずに強制執行で財産の差押えができたり、家を競売にかけることが可能になってしまいます。
債権者が裁判所を通さずに強制的に財産を差押えたり、売ったりできるようになるので、債権者にとって非常に都合の良い書類になっています。
普通に連帯保証人になる際にこれらの書類の提出は不要ですので、断固として拒否するようにしましょう。
債務整理と保証人、連帯保証人の関係
保証人、連帯保証人がいる借金の場合、債務整理を検討する際は考慮しないといけません。
保証人や連帯保証人がいる借金を債務整理した場合、取り立ては保証人や連帯保証人にいくことになります。
債務整理の手続きをはじめると債権者からの取り立てはすぐに止まりますが、債務整理は債務者本人だけに影響するもので、債務者の取り立てが止まっても返済義務がなくなるわけではありません。
債権者は保証人や連帯保証人に取り立てをすることができるので、すぐ取り立てがいくことになり、何も考えずに債務整理をすると保証人や連帯保証人に迷惑がかかることになります。
借金の額によっては保証人や連帯保証人も債務整理をすることになるなど影響が大きいです。
任意整理であれば、整理対象となる債務を選んで債務整理をすることができるので、保証人がいる債務を整理対象から外すことで保証人に迷惑をかけず債務整理をすることもできます。
その他、様々な方法がありますので、専門家に相談した上で最も良いと思われる選択肢を検討するのが良いでしょう。
借金問題は素人が悩んでいても仕方がなく、専門家に相談することで思ってもみない解決策が見つかる場合もあります。
借金問題に強い弁護士事務所の多くは無料相談を実施していますので、保証人や連帯保証人のいる借金で悩んでいる人はまず相談されると良いでしょう。
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